相続にかかる基礎的資料の収集と相続税の計算

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公開:2018年8月30日  修正:2018年12月25日

1 はじめに

相続税とは、親族などが亡くなったことにより財産を受け継いだ場合や遺言により財産をもらった場合に発生する税金である。

ここでは、Aさん宅の例をあげながら相続にかかる基礎的資料の収集と相続税の計算について説明する。

ちなみに、「相続をするときのプロセスとそのポイント」については次を参照してほしい。

2 相続にかかる基礎的資料の収集

前提

Aさん宅の資料

  ・家族:Aさん(死亡)、妻、子2人

  ・保険:契約者Aさん、被保険者Aさん、死亡保険金受取人Aさんの妻

  ・資産:預貯金8,000万円、保険2,000万、借金420万円

固定資産 面積200平方m、路線価18万円

  *以下Aさんに関する試算を緑字で記載する。

(1)相続財産の基礎控除の計算

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

Aさん宅の場合:相続人が配偶者と子2人なので

 基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×3)=4,800万円

となり、これ以下なら相続税はかからない。また、税務署に相続税の申告をする必要もない。

(2)相続財産の調査

被相続人が持っていた財産や権利などプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も含む。このため、場合によっては相続しないという判断も必要になる。

①みなし相続財産

相続財産ではないが税法上相続税がかかるもので、生命保険金や死亡退職金が該当する。

・生命保険金の非課税枠

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

Aさん宅の場合:Aさんの生命保険金2,000万円なので課税額は

2,000万円-500万円×3=500万円

②死亡前3年以内の贈与財産

すでに贈与税として収めた金額は差し引かれる。

(3)配偶者の税額軽減

相続人が配偶者のときは、法定相続分と1億6,000万円のいずれか多い額まで相続しても相続税はかからない。

法定相続分は下表のとおり。

相続人 法定相続分
配偶者 子供 配偶者1/2、子供(2人以上のときは全員で)1/2
配偶者 直系尊属 配偶者2/3、直系尊属(同上)1/3
配偶者 兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹(同上)1/4
配偶者のみ 全部
子供のみ
直系尊属のみ
兄弟姉妹のみ

 Aさん宅の場合:上の表①に該当するので配偶者1/2、子それぞれ1/4となる。

なお、これにより相続税がかからなくなる場合は、税務署に相続税の申告をする必要がある。

(4)小規模宅地の評価減

故人と生計を一にしていた親族が相続した事業用や居住用の土地のうち、一定の面積以内の小規模宅地の評価額が低くなる制度

〇特例が適用できる限度面積

・自宅用地330平方m

・事業用地400平方m

・貸付事業用宅地200平方m

〇特例の適用

・自宅用地・事業用地のみの場合:限度面積まで80%OFF

・貸付事業用地のみの場合:限度面積まで50%OFF

・自宅用地・事業用地と貸付事業用宅地ありの場合:

自宅用地を330分の200で換算する

 ②事業用地を400分の200で換算する

③貸付事業用宅地はそのまま計算する

④①~③の合計面積が200平方mまで特例の適用ができる。

 Aさん宅は面積200平方m、路線価18万円なので

土地の評価額は18万円×200平方m=3,600万円だが

80%が評価減となり 720万円になる。

なお、この場合も上記同様、これにより相続税がかからなくなる場合は、税務署に相続税の申告をする必要がある。

3 課税対象額

課税対象額 = 相続財産の合計額 - 基礎控除額

 Aさん宅の場合:課税対象額=8,000万円+500万円+720万円-420万円

=8,800万円 になるので

 課税対象額 = 8,800万円 - 4,800万円 = 4,000万円

 

4 相続税の総額の計算

相続税の計算は、先ず一旦、法定相続分で分割したものとして相続税の総額を計算する。

相続税 = 課税対象額 × 税率 - 控除額

相続税率

基礎控除額を超えた額 相続税率(%) 控除額(万円)
1,000万円以下 10
3,000万円以下 15 50
5,000万円以下 20 200
1億円以下 30 700
2億円以下 40 1,700
3億円以下 45 2,700
6億円以下 50 4,200
6億円超 55 7,200

Aさん宅の場合

  子1 子2
課税対象額の分割 2,000万円 1,000万円 1,000万円
相続税 250万円 100万円 100万円
相続税の合計額

450万円

法定相続分で分割 225万円 112.5万円 112.5万円
税額軽減適用 0* 112.5万円 112.5万円

*:配偶者の税額軽減はここで適用される。

5 おわりに

申告期限までに、遺産分割が決まらない場合、「配偶者に対する相続税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」といった特例が使えなくなってしまうので、計画的に申告しよう。

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